「多様性」という名の「価値観ギャップ」を乗り越える職場指導(OJT)のあり方

2024.05.03 managementOJTリーダー(後輩指導者)育成

GWがあけると本格的に職場配属され、実務能力を身に付けるタイミングとなる新入社員の方々のご様子はいかがでしょうか。

今回は当方が4月に担当したビジネスマナー&コミュニケーション研修で接して見えてきた新入社員の心理を捉えることで新入社員の離職防止につながる、配属後早い段階での関わりについて考えてみたいと思います。

【新入社員はどんなことを大事にしているのか?】
つい先日までテレビドラマで昭和時代の価値観と令和の価値観を題材にしたコメディードラマを放映していました。
懐かしいような、笑えないような、そんな気持ちで見ていました。

今年の新入社員は、Z世代の中でも大学入学直後から3年間コロナで閉じ込められ、学校にも行けず、バイトもあまりできなかった世代の方々です。Z世代の中でも特殊な環境で大事な3年間を過ごしてきたといえるでしょう。

4月上旬に新入社員研修で約100名の新入社員と接しました。
彼らと話をさせていただくと、とても意欲があり、これから始まる社会人生活に期待をしている感じが伝わってきました。講師に質問をしたり、個別練習を申し出る積極的な方もいらっしゃいました。

研修では価値観の違いを理解するためのワーク「価値観に順位をつける」を設け7つの選択肢(お金・仕事・職位・健康・家族・友達・趣味)から各自優先順位をつけました。
本コラムをご覧くださっている方は、どの価値観に優先を置くでしょうか。
また、新入社員はどのような価値観を優先したと思われますか。

顕著だったのは、「職位」を最下位にしている方が9割を超えていたことです。
また、約100人のメンバー中「仕事」を1位にしている方は4人という結果でした。

結果は、上位項目順に、趣味→家族→友人の順でした。
自分らしさや自己の価値観を大切にするZ世代の特徴を表す結果であると感じました。

一般的にZ世代(おおよそ12~28歳の世代)の特徴としてよく言われることは
・デジタルネイティブである:生まれたときからネット環境がある
・社会問題・環境問題に興味関心がある:自分が社会でどのように貢献できるかが重要
・個人主義:個々の価値観を重視し多様性理解が進んでいる
・効率重視:タイパ・コスパを意識しており、無駄を嫌う
・自己成長に積極的:働く意義として金銭よりも自己成長を重視。また自分の市場価値が気になる

などです。

更に、私が参考にしているデータの1つ、リクルートの「新入社員意識調査2023」の「働くうえで大切にしたいこと」の結果も確認してみると

「働くうえで大切にしたいこと」
・仕事に必要な知識やスキルを身につけること(48.5%)
・周囲(職場・顧客)との良好な関係を築くこと(43.2%)
・社会人としてのルール・マナーを身につけること(43.0%)
などが上位に来ている反面、

・元気にいきいきと働き続けること(26.9%)

は、前年度比、過去5年、10年と下がり続けています。
出典:リクルートマネジメントソリューションズ「新入社員意識調査2023」
能力を重視し、フレキシブルなキャリアを描く彼ららしい結果だと感じるのは私だけではないはずです。

【根底にあるのは「傷つきたくない」という気持ち】

そこであらためて彼らを理解するうえで重要な、環境や教育について見ていくと、生まれたときから大量な情報が多様なサービスで周りに存在し、常にその中からそのとき時に最適な情報を選び取り処理していくという状況で生まれ育っています。

激しく変化するVUCAの時代の中で自分の人生そのものをいかに正解に近い形で効率よく生きていきたいと考えるのは当然のことなのでしょう。

したがって、よく聞かれる「失敗してもいいからチャレンジしてみろ!俺が責任を取るから。」という上司の言葉も、彼らにしてみると「失敗することに何の意味があるのですか?正解を知っているなら、教えてください。責任は取ってくれても失敗して傷つくのは自分なんです」という会話になってしまいます。

では、どうしたら彼らが成長し、企業に貢献できる存在となって彼らの有用感を満たすことができるのでしょうか。

最近「配属ガチャに外れた」・「配属で詰んだ」など聞くことがあります。
入社前に配属がわかっているなら仕事に対するマインドセットも整うのでしょうが、まだまだ入社前に配属が決まっている会社の方が少ないのが現状です。

配属前の研修においてどこの部署に配属されても意気揚々と働けるような新入社員側のマインドセットができればいいのですが、なかなかそういった機会は少ないはずです。

【繊細さを受けとめ「貢献したい」という気持ちを共有する】
もし、希望と違う配属だったと新入社員が意気消沈して自分の部署に配属されたら、その新入社員をどのように教育していくかは大きな課題でしょう。

そんな時OJTリーダーはどのように新人に接するべきでしょうか。

2020年から本格的に始まった探求学習ですがZ世代も総合的な学習の時間として、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成することを目標とした学習をしています。

そんなZ世代の彼らは目的や貢献を大切にする価値観をもっています。自分の部署がどのような目的をもって会社や社会に貢献できるかをしっかり伝えることがOJTリーダーの役目でもあります。

では、その役目を果たすためにどのように伝えていくことができるでしょうか。

まずOJTリーダーは社会における自分の仕事の重要性ややりがいを自ら棚卸してみることから始めてみるとよいでしょう。そして、棚卸した経験を新入社員と一緒に振り返ってもらい、彼らからその仕事の意味や価値を言葉にしてもらってみてはいかがでしょうか。
すると、OJTリーダー自身も気づかなかった部署やその仕事の意味や価値を認識できるかもしれません。

その上で、どこをどのように目指すのかを一緒に設定することで、新入社員も職場にとって欠かせないメンバーの一員として有用感を感じてもらえるー居場所があるーと感じられるのではないでしょうか。

なお弊社では配属が早い企業のOJT担当者を対象に「OJTリーダー育成セミナー」を行い、新入社員受け入れのための事前準備や育成計画、関係性を築くためのコツなどを学んでいただきました。

このセミナーは本編とフォローアップワークショップの2本立てとなっていますので、5月になりましたら、実際参加者様が学ばれたことを実践してみてどのようなことが成果になり、どのようなところが困ったのかを伺うことができます。

ワークショップ開催後のコラムもお楽しみに。

また弊社では、7月以降の配属、中途採用社員の受け入れなどをご計画中の組織に向けて、OJTリーダー育成セミナー ~育成に必要な準備力、関係性構築力、指導力をつける~を開催いたします。
事前準備で指導に必要な情報が整理され、セミナーではロールプレイングなどを実践的に行います。
2024年6月19日(水) OJTリーダー育成セミナー
2024年6月26日(水)新任マネジャー育成セミナー

ご関心ある方は、セミナーご案内も参照ください。
文責:コーディネーター 後藤真紀子