『品格の教科書』に学ぶ、時代の変化に合わせビジネスコミュニケーションを進化させていくために

2022.01.20 インナー☆ブランディング

人事や人材育成に携わるご担当者様は、離職率、メンタルヘルス疾患率を低減させ、社員にやりがいや働き甲斐をもってイキイキと働いてほしい、そのために、
・心理的安全性のある職場風土はどのようにつくるのだろうか
・一体感のある組織にするにはどうしたらよいだろうか
・風通しのよい組織にするにはどうしたらよいだろうか
・社員一人ひとりが考え動ける組織にするにはどうしたらよいだろうか
・社員が自発的に学習する組織風土をつくるにはどうしたらよいだろうか
という問題意識のもと、取り組まれているのではないでしょうか。

そこで本コラムでは、理念や方針を、社員一人ひとりのやりがいや働き甲斐につなげ、お客様はもちろんのこと、地域や業界に対して高い貢献をされている企業の具体的な取り組みを、書籍などをもとにご紹介しております。

時代の変化に合った、ビジネスコミュニケーションとは
例年1月に入ると、多くの人材育成ご担当者様が、4月入社の新入社員研修の準備をスタートされます。そこで今回は、新入社員研修には必ず組み込まれる、ビジネスマナーやコミュニケーションに関連するテーマでご紹介します。

リモートワークがスタートした2020年以降、マナーやビジネスコミュニケーション教育も様変わりしました。例えば、「ソーシャルディスタンス」を取る必要が出てきたことから、コミュニケーションの主体はオンラインに。オンラインがしにくい職場では分散勤務に。業務での会話は必要最小限に。ランチは一人または会話を控え目。歓送迎会はしない。挨拶などの声掛けも小声で。など。
これまで「大事だ」とされてきたことが、今は「控えるように」と、反対になっています。

また、オンラインが中心の職場では、ネットワーク環境の問題から、音声または文字を中心としたコミュニケーションが主体となり、相手の態度や表情といった、ノンバーバルなコミュニケーションから汲み取っていた情報が汲み取りにくくなりました。また、コミュニケーションを取る相手、会議やミーティングなどでの発言機会など、これまで以上に偏りが出ています。

こうした様々な変化に対し、問題意識を持っている職場では、早くから、ミーティングの進め方を変えたり、オンラインランチやチャットなど、気兼ねないコミュニケーションの頻度を高め補う努力をしてきました。

しかし、従来のコミュニケーションの概念のまま現状に対応している職場では、生産性の低下やメンタルヘルス疾患の増加、一体感の喪失、など、その問題は徐々に表れ始めています。

また、感染症が収束しても、自然災害などの問題が浮上すれば、また、新たなワークスタイルへの変革が求められます。このような激変期において、新入社員に、ビジネスコミュニケーションをどう伝えていけばよいでしょうか。

今回は、日本文化、礼儀・作法の源流となる京都にて、多くの教養人との交流を通じ、礼儀・作法の根幹となる考え方を『品格の教科書』として上梓された、山本由紀子さんの著書をもとに考えてみたいと思います。

創業百三十二年の呉服屋で学んだ大切なこと
ここで少し私の自己紹介をさせてください。
私は岐阜の呉服屋の一人娘として生まれました。
当家は、江戸時代中期に料理旅館として創業。次第に呉服屋を兼業するようになり、明治から呉服屋の看板のみとなりました。呉服屋としては、創業百三十二年、その前の旅館から数えると、創業二百年以上になります。
両親は商売が忙しくて、祖母に育てられました。祖母は毎日のように裏の三輪神社へ連れていき、昔の話をしながら遊んでくれました。店と家庭が同居する家では、当たり前に着物に囲まれ、周囲の誰もが「ゆくゆくは後継ぎ」と、見ているのを感じながら大きくなりました。
幼い頃から、家では正座で足を崩すことは許されず、行儀よく過ごすようしつけられました。おじぎの仕方、指の揃え方、敬語の使い方など礼儀作法や所作を日常的に注意されながら育ちました。

さらに、学生時代は京都の親戚宅に身を寄せました。それは周囲から「京都の生き字引」と呼ばれていたおばあさんに、私を預けて教育してもらうためでした。
その「京都のおばあさん」は、結婚する前は老舗料亭の仲居さんで「若いのに気がきく人」として、京都でも有名だった人でした。茶道、華道、三味線、長唄、清元‥…ありとあらゆる師匠の免状をもち、裁縫も料理もプロ級でした。
おばあさんは私を良い師匠に付けて、色々なお稽古事を学ばせました。それだけでなく、家へ帰るとまた自分でお稽古を付けました。
それは形を教えるだけでなく、「なぜそうするのか」を一つひとつ解説してくれ、とても興味深いものでした。多方面の文化に精通しているからこそ、その共通する精神性の根本を教えてくれたのでした。

大学を卒業後、私は金沢の呉服屋で修業し、岐阜へ移りました。
実家では呉服屋として着物を売るだけではなく、地域で作法や儀式のやり方を教える立場になりました。
その頃感じたことは、時代が大きく変わっていくのに、昔のやり方では合わなくなっていくということでした。
そして、新しい基準を示すのも地域一番店の呉服屋の仕事であると考え、責任を感じながら変えていったのです。その考える基となったのは「やり方」ではなく、「なぜそうするのか」。根本は、人としての「あり方」でした。
作法ばかりを追うと、とても堅苦しく、社会の変化にも合わなくなります。ですから、相手を気遣い、人間関係を円滑にすることを基準に考えることが大切です。

時代とともに変わる「作法」、変わらない「あり方」
たとえば、手土産を持っていくとき、昔は風呂敷に包まなければ失礼にあたりました。
しかし、今はどこのお店でもきれいな紙袋に入れてもらえます。風呂敷で包むという行為は「汚れや埃が付かないように大切にお持ちしました」という相手への思いやりですから、今は紙袋がその代わりになるのです。
ただし、紙袋は持ち運ぶための道具ですから、中身だけを取り出して渡し、持ち帰りましょう。
外出先で会う場合は、相手の方が持ち帰りやすいように紙袋のまま渡しても大丈夫です。「紙袋のまま失礼します」の一言を添えると丁寧です。その場合くれぐれも。くたびれた紙袋は避けましょう。(引用了)

私の新入社員時代は、ビジネスコミュニケーションに必要な考え方や作法を「形」として学びました。「なぜそうするのか」の解説はなく「そうするように」と教わった記憶があります。そのため、『品格の教科書』を読むまで、手土産は紙袋から出してお渡しする、ということは知っていても、なぜそうするのかについて、明確ではありませんでした。

また、ほとんどの会社では新入社員教育で「挨拶」を指導されると思います。しかし、私のこれまでの経験では、新入社員が挨拶を出来るようになっても、職場配属からしばらくすると、「浮いてしまうから」という理由で、挨拶をしなくなっていきます。この現象を毎年見ながら(不毛だなぁ…)と、ひそかに感じていました。
しかし、『品格の教科書』の挨拶の項を基にすると、本来の姿や形があらわれるように思います。挨拶をする目的や背景を誰もが理解していれば、誰もが挨拶を自然にできるようになると思います。

そのためにも、まずは、自社の理念や方針を体現する立場にある、経営者、管理職、そして、人材育成担当者や社内講師の方は、ビジネスコミュニケーションの歴史的、文化的背景に関心を持ってみてはいかがでしょうか。誰もが納得し、奥行きのある考え方、行動がとれる社員づくりにつながると思います。

特別オンラインワークショップセミナーのご案内(2月15日)
私たちがビジネスコミュニケーションを指導する上で悩んだり、迷ったりすることについて、歴史的・文化的背景をもとに、今の状況に合わせた考え方や行動についてご一緒に考える、ワークショップ型セミナーを開催いたします。
講師は、『品格の教科書』著者 山本 由紀子氏です。

ご参加希望の方は、ワークショップのご案内ページよりお申し込みください。
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