世代間ギャップを活かす新入社員育成のヒント

2025.02.20 OJT

年が離れた新人指導役が知っておきたい「関係性構築力」
~世代間の違いを活かす新入社員育成のヒント~

新入社員育成に必要な3つの力
新年度まであと一か月と少しになってきました。新入社員を受け入れる職場では、これから仕事場に馴染んでもらい、どんどんと仕事を覚えてもらい、仕事にやりがいをもって活躍してもらいたいと思っていらっしゃるのではないでしょうか。

とは思いつつ、実際どのように新入社員に接したらいいのだろう? また、自分も初めてOJTをする立場になってどのように振舞えばいいのか、どのように指導したらいいのかわからない、と新入社員が入ってくる期待もありながら、不安を感じている方も多いようです。指導役=OJTリーダーの育成は進んでいますか。特に、人員の面から、年が離れた人が新人の指導を担う場合、ハラスメントなどを過剰に心配するあまり、世代間のギャップに戸惑いを感じる方も多くいらっしゃいます。

新入社員育成を担当するOJTリーダーには3つの力をつける必要があります。それは

準備力…新入社員の受け入れに必要な準備がしっかり出来ること
関係性構築力…価値観や考え方の異なる相手でも関係性を築けること
指導力…業務の指導や出来栄えのフィードバックといった次につなげる指導の基礎スキルをつけること

ですが、年が離れた人の場合は特に「関係性構築力」について知識と関わり方を知っておくと、スムーズに業務指導へと移行できます。

新入社員育成における関係性構築のコツ
関係を構築するためには、価値観や考え方の違う相手のことを理解する上での事前情報が重要になってきます。今年度入社してこられる方で大卒入社の方はちょうど高校性の頃にコロナの流行によっていろいろと制限を受けた世代になります。(詳しくは前回のコラムをご覧ください)

まずは、この世代の特徴や価値観をおさえておきましょう。弊社でも新入社員を対象としたビジネス基礎講座を担当している東京商工会議所では、4月入社時点で約1000人規模の新入社員にアンケートを行っています。その調査データ「2024年度新入社員意識調査」を見てみます。
その意識調査の項目に、「『理想だと思う上司』はどのようなことを大事にしたり重視する人か」という質問があります。その回答は上位から、「仕事の指導を丁寧に行うこと」「明確な理念や考えを持っていること」「人間関係、チームワークを重視すること」の順で重視していることがわかりました。

また、新入社員の意識調査を行っている複数の団体のアンケート結果でも新入社員が上司や先輩に求めるものは、
・相手の意見や考えに耳を傾けること
・一人ひとりに対して丁寧に指導すること
などの項目が上位になっています。以上のことから、新入社員が上司(または指導役)に期待していることは、「仕事を丁寧に教えてくれること」だということがわかります。

それ以外の調査結果で興味深いことは、「どのような職場で働きたいか」の質問に対して「アットホーム」「活気がある」「みんなが一つの目標を共有している」という回答が軒並みポイントを下げた結果となり、上位の結果となっていたのは、「お互いに助け合う」「遠慮をせず意見を言い合える」「お互いに個性を尊重する」という内容になっています。

以上のことを踏まえると、「個」を大切にし、フラットに意見が言えて協力しながら仕事をしていきたいという気持ちが強いということがいえそうです。

こうした変化の背景には、「キャリア教育」や「探求学習」のように自らの興味や疑問に対し学びを深めていくといった教育を受けてきた世代であることが影響しているでしょう。そのような世代は、目的(パーパス)を大切にし、自主性を重視し、情報収集が得意です。以上のことから、業務の目的や背景といった「なぜそれをするのか」を伝えることが指導には重要ですが、自らの経験から語って伝えることができる年長者の指導役は、実は、適任な可能性があります。

関係性構築力=新入社員の「居場所」づくり
彼らの価値観や特徴が理解できたところで、まずは受け入れる環境を整えることが重要です。そのためには彼らにとっての「居場所」を提供することが鍵となります。この「居場所」とは、単に物理的な場所を示すだけでなく、心地よく働ける環境、意見を自由に言える雰囲気、そして互いに尊重し合う関係性を築くことを意味します。

「居場所」は、組織心理の研究家ハーバード・ビジネス・スクール教授のエイミー・C・エドモンドソンが提唱した「心理的安全性」とも合致します。簡単に心理的安全性の概念についてまとめると、「組織の中で誰もが自分の考えや気持ちを安心して発表できる環境のことで、対人リスクを取っても安全であり、発言により恥をかかされたり、拒絶や否定をされたり、罰を与えられたりしないと信じられる職場環境の状態」ということです。

前出の東京商工会議所の別のアンケート項目「社会人生活で不安に感じること」では、「仕事が自分の能力や適性に合っているか」の次に「上司・先輩・同僚と上手くやっていけるか」が上位に来ています。このことからも、新入社員にとっても「居場所づくり」は大きな要素であることがわかります。

新入社員が安心して自分の能力を発揮できる「居場所」という考え方のもとそれを提供することで、新入社員が組織を活性するとともに、彼らが成長し、組織全体のパフォーマンス向上にも繋がるでしょう。

これからの新年度、新たな仲間たちと共に、互いに支え合える関係構築力を築いていきたいものです。

Six Stars Consultingでは新入社員育成を担当される皆様に3月に「OTJリーダー育成セミナー」を開催いたします。その中では、関係性構築力だけではなく、準備力や指導力についても習得できる内容となっています。ご関心のある方はぜひ、同サイトより資料をダウンロードしていただき、詳細をご確認ください。
コラム執筆:後藤真紀子

(参考)
調査概要:東京商工会議所 「2024年度 新入社員意識調査」
調査期間:2024年4月2日~4月5日
調査方法:Webアンケートシステムを利用
調査対象:東京商工会議所(事務局:人材能力開発部 研修センター)が実施した新入社員研修の受講者1,021名